癌と痴呆の神頼み

癌サバイバーの母(81)を介護する父(85)、それを支える家族のブログです。

高齢者の抗ガン剤治療

退院後の母は、完全寛解を目指し、食事、運動、規則正しい生活を心がけ、順調に時が過ぎて行きました。。。。のはずでした。

胃切除手術から7ヶ月経った今年(2017年)3月、何度目かの定期検査で腫瘍マーカーCA19-9の数値がいつもの10倍以上の300まで跳ね上がったのです。

主治医からは抗ガン剤による治療を提案されましたが、高齢者への抗ガン剤治療にはいささか不安がありました。

2017年4月28日の朝日新聞デジタルによると、

高齢者の抗がん剤・緩和ケア 効果は? 診療指針策定へ

厚生労働省は、高齢者のがん治療についての診療指針を策定する検討を始めた。副作用を伴う抗がん剤治療や苦痛を減らす緩和ケアが、延命や生活の質にどれほど有効なのか。大規模な調査をして、高齢者に特化した判断基準づくりを目指す。

とのことです。

母は抗ガン剤治療の道を選びました。そんな母を見て言えることは、

   高齢者でも抗ガン剤によるガン抑制や縮小させる効果はある

ということです。ただし、その副作用に耐えられるだけの気力と体力があることが条件です。

もし、それらがないと逆に寿命が短くなったり、生活の質を極端に低下させてしまうのです。

母の退院、父の異変

術後の経過は良好で、翌日から歩いてトイレに行ったそうです。結局、入院は10日間となりましたが、80歳と言う高齢であることを考えると、上出来でしょう。その間、毎日見舞いに行っていた父の献身ぶりにも頭が下がります。

そんな父の異変に最初気付いたのは、母の体力も回復し親戚一同で集まった会食の席でのこと。この席には1歳になる兄の孫、つまり母のひ孫も一同に会し、賑やかな宴席となりました。

地元で多少名の通った中華料理に舌鼓をうち、デザートの杏仁豆腐も食べ終わり、そろそろ出ようとした所、父が、

「デザートまだなの?」

と、真顔で聞いてきたのです。その時は母が

「さっき食べたじゃない。何バカなこと言ってるの。」

と、たしなめてその場は収まりました。

 

今思うと、あの時から父の異変は始まっていたのです。

手術成功!ここからがスタート

予定では4時間程度で終わるはずでしたが、5時間経っても終わりません。

ワタシ「長いなー」

父「長いねー」

ワタシ「…。」

父「...。」

ワタシ「まだかなー」

父「まだかねー」

ワタシ「…。」
父「...。」

永遠に感じられた時間も、6時間でようやく終了。

手術は無事成功し、主治医から切除した胃を見せてもらいました。金属のトレーに載せられたそれは、生の内臓その物でしたが、一部に白く変色したゴルフボール大の組織の塊が見受けられました。これが母の身体を蝕んでいた癌の正体です。加えて黄色っぽいリンパ節も数個切除されていました。

主治医曰く、「思った以上にリンパ節が周りの組織に癒着していて、時間がかかりました。」

後にこの言葉が大きな意味を持つことになるのですが、何も知らないワタシ達は手術の成功に胸を撫で下ろすのでした。

 

レベルⅡaの胃癌

手術当日、父とワタシが立会いました。

主治医の話によると、母の胃癌は他の臓器までは転移していないものの、漿膜近くまで侵食しているとのこと。

 

早期胃がんと進行胃がん胃の粘膜の構造はイラストのように、粘膜層 → 粘膜筋板 → 粘膜下層 → 固有筋層 → 漿膜(しょうまく)下層 → 漿膜となっています。

母の場合は、レベルで言うとⅡaとのことでした。切除は、胃の出口である幽門から2/3と周りのリンパ節です。全て切除して、再発も無ければ寛解も夢ではありません。

ワタシは父と2人、祈るような気持ちで手術が終わるのをまちました。

 

参考)がん総合ポータルサイト がんのきほん

http://www.gan-info.com/305.6.html

手術まで

方針が決まれば、手術日迄はあっと言う間でした。

母本人が主治医の先生を信頼していた事も大きかったと思います。母曰く「若くて(40台?)背が高くて、イケメンだし、あの先生は当たりだわ」

理由はどうあれ、医師と患者が信頼関係にあるのは良い事です。

8月某日の手術に向けて、CT、MRI、PETなどの検査が繰り返されました。

昨年夏の話です。

胃癌の5年生存率は、96.4%です

大学病院での精密検査の結果、やはり悪性腫瘍、つまり胃癌ということでした。

大きさは、2cm台で内視鏡での切除は無理。

80になって外科手術なんて、息子としては躊躇いもありましたが、当の本人は即決で摘出を決めました。

今日日、癌は治る病、特に胃癌の生存率は高いこともあり、摘出の方向で進めることになりました。

今思うと、この時の判断は正しかったのか、早計に事を進め過ぎていなかったか、悩むところです。

 

胃がんの外科手術をした症例のステージと5年後の相対生存率※です。

ステージ   Ⅰ        Ⅱ       Ⅲ     Ⅳ
生存率(%) 96.4   67.6   49.0   17.0

出典)全国がんセンター協議会(全がん協)
http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/index.html

※性、年齢分布、診断年が異なる集団において、がん患者の予後を比較するために、がん患者について計測した生存率(実測生存率)を、対象者と同じ性・年齢分布をもつ日本人の期待生存確率で割ったものを相対生存率といいます。

その時は、突然やって来る

昨年の6月、珍しく兄からの電話。

お袋の胃に腫瘍が見つかった。癌かもしれないって。

 

突然の知らせに、暫く状況が把握できませんでした。今迄大病した事もなく、いつも元気で明るい母だっただけに、目の前に突きつけられた残酷な現実を受け入れるには時間が必要でした。

 

とりあえず、某大学病院で精密検査を受けるとのこと。その後の兄との会話は、よく覚えていません。